むっしゅたいやき

素敵な歌と舟はゆくのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

素敵な歌と舟はゆく(1999年製作の映画)
3.8
至福の映像美。
オタール・イオセリアーニ。
原題は『Adieu, plancher des vaches!(さらば、陸地よ!)』。
この辺りからイオセリアーニ作品の邦題は、訳者の恣意的な意図が透けて見え、煩く感じられる様になってしまう。

扨、本作は人は自分の持っていない物を追い求める-、そんな普遍的な人のおかしみ、かなしみをコメディタッチで描いた群像劇である。

物語は三人の主人公に由るエピソードの羅列であり、一人にスポットライトを当てた太い筋が有る訳ではない。
起伏も平板で中弛みもあるが、登場人物も割合多く、それぞれが絡み合う為流し見していると置いて行かれよう。
この為、本作も好き嫌いの別れる作品であろうと思われる。

但し本作に於ける数葉の描写は、イオセリアーニの詩的映像美の極北であろうかと思う。
特に窓を打つ雨の描写や、タイトルにもなる峡谷を往く小舟のカットが素晴らしい。
鑑賞後には爽やかな青空を想わせる作品である。
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