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キートンの蒸気船/キートンの船長のYのレビュー・感想・評価

4.5
全くもって自分よりも背の高い立派な青年となって現れなかった息子。
会ったばかりのキートンのなりにいらつきながらも、俺が男にしてやるとばかりにいろいろ買い与えたり、人の殴り方を教えたり。早く寝ろとベッドに押し込んだ後に、荒々しく布団をかけてあげるなど、イライラしながらもふと出てしまう伜への愛情にじんと来る。

お父さんの顔を見上げて、顔色を伺いつつ、気後れしながらも、距離を測る様がかわいい。一体何歳の設定なんだ?この当時、キートンは33歳、ヒロインは17歳。2人ともすごい子どもに見える。

真顔でおなじみのキートンだけど、白黒映画は大半の台詞、声色、音響、色が取り払われた世界であり、さらにそこから表情という情報まで取り去ってもなお、伝わるものがあるというのは驚異的だ。これら条件を前提に作品を考えるのって、また違う視点や思考方法があるのだろうな。そのうえ、そこに笑いを付加するのって、途方もなく練られた計算が必要だなと。脱帽。
また視聴者である私たち人間は、これだけ情報が削がれて、特に大仰なパントマイムがなくても、行間を想像する力や微かな顔の動き、仕草や間で、心情やその後の展開を察することができてしまうってことも驚異的。
現代のあけすけさについて問い直そう。

キートンはメスト・エジルとかエンツォ・フェラーリのような顔の系統な気がしてきた。

キートンの作品には、サラッと、差別とまではいかないのかもしれないけど、黒人やユダヤ教徒を自分たちとは相容れない異質なものとして描くシーンがありますな。
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