水野統彰

激動の昭和史 軍閥の水野統彰のネタバレレビュー・内容・結末

激動の昭和史 軍閥(1970年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

良作。
個人的な感情となるが、国民ながら東条を戦犯とするに十分な演技を持って描かれている。

作品終盤、神風特別攻撃隊の隊員が、戦地に処罰徴兵された新聞記者に対して放った一言があまりに衝撃的である。

その一言は「勝てる戦争ならいいのか?」

新聞記者は毎日新聞において日本のサイパン島敗戦を事実として世に広めた人物である。
これが理由で処罰徴兵となった。

敗北の事実を伝えたことで記者は一部の者から「よく事実を伝えた英雄」として見られるようになる。

しかし神風特別攻撃隊の隊員より放たれた「勝てる戦争なら良いのか?君たちは戦争が始まった当初、勝ったときには東条東条と言っていたのに今は全責任を東条に負わせてる。あのとき戦争をすすめたのは君たちだ。君たちにその責任はないのか?」
「勝てる戦争ならやってもいいのか?」
「負けちまえこんな国。日本が負けるためなら喜んで死んでやる。」

隊員の放った一言に何も言い返すことのできない記者。

その一場面に戦争を始めた日本、そして日本という国の在り様が映し出されている。

さて、東条といえば靖国神社に神霊として祀られている。
靖国神社の設立主旨は「日本国つまりは天皇のために力を尽くし死した人物を祀ること。」である。この設立主旨に照らしたとき、果たして東条の行いは本当に国家のためだっただろうか、それとも自身の名誉のためだっただろうか。
少なくとも形式的にでも東条を英雄と崇めることの賛否については深く論じられるべきである。
水野統彰

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