ナーガ

東京物語のナーガのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
3.0
(数ヶ月前に見て下書き書いていたのに投稿してなくて、今頃になりました)

小津安二郎作品たぶん初めて見ました。

伊藤弘了という人の書いた『仕事と人生に効く教養としての映画』っていう本にかなりのページ数使って、この映画について解説がされていて、絶対見るべき映画と絶賛されていました。それがきっかけ。
だからあらすじとか映像的な仕掛けとかを知った上で見ました。
で、この見方、失敗でした。少なくとも1回は無垢な状態で見たほうがよかった。
本に書いてあったことを確かめるために映画を見るという感じになってしまって、純粋には楽しめませんでした。
完全に失敗。
でもこの本のおかげで見ることができたので、その点では感謝なのですけど。


そんな純粋では無い見方をしたので、ひねくれた感想になってしまうかもしれません。


杉村春子さんの演技がうま過ぎるせいか、他の人の演技が嘘っぽく見えてしまいました。私が当時の言葉遣いに慣れていないせいもあるのかもしれません。妙に丁寧過ぎるというか。

初めの方の老夫婦の会話からも、少し違和感を感じました。夫の失くしものを妻が一緒に探してるんだけど結局夫のカバンから出てきて、「ああ、ここにあった」「そうですか」だけで終わってましたよね。そもそもあそこから驚きがあって、私があの妻なら「私のせいみたいに言ってたよね、ごめんなさいくらい言ってよ。」ってなると思うんですよ。どうしてあれだけであの会話が終わるんでしょう。妻は言いたいこと飲み込んだのかな。でも妻の表情は言いたいことを飲み込んだようには見えませんでした。
最後の方のお葬式の後の食事シーンでも似たようなことを末娘に対して感じました。長女が末娘にお母さんの帯や着物を形見として欲しいから出しといて、と言った時に、末娘は了承していた風に見えました。ところが後から、次男の嫁にその時のことを「酷いわ」とか愚痴ってるんですよ。あの場で言えばいいのに。
妻は夫に逆らえない、妹は姉に逆らえない、そんな当時の息苦しさを感じてしまっていたたまれない気持ちになりました。


熱海の旅館のシーンで、廊下に2足のスリッパがきちんと揃えて脱いであるのが、印象的でした。「この部屋に寝てる人がいるんですけど」って無言で訴えているようで。でも騒いでいる人たちには届いていませんでしたね。
あの時も、何か言ったらいいのにって実はモヤモヤしてしまいました。せっかく子供たちが選んでくれた旅館でゴタゴタを起こしたく無いと思ったのでしょうか。


映画通からの評価は高い映画ですが、私にはあまり良さがわかりませんでした。多分作られた当時だったら共感したり考えさせられたり、見る意味もあったのかもしれませんが。
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