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東京物語のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
3.9
「溝口健二」「黒澤明」と並ぶ日本映画界の(三大)巨匠の一人、小津安二郎監督の代表作で、監督がサイレント期から描き続けてきたテーマ、親子関係の集大成と言える名作。
東京で暮らす子どもたちを訪ねた老夫婦の姿を通し、戦後日本における家族関係の崩壊(近代化、資本主義化する現代社会のの中で昔風の愛情豊かな親子関係が困難になったこと)をとても穏やかなトーンで描いている。
撮影は監督とコンビの厚田雄春で、いつものとおり、ローポジションやカメラの固定といった“小津調”と形容される技法を使っている。
なお、「晩春」「麦秋」「東京物語」を原節子演じるヒロイン名から「紀子三部作」と呼ぶこともある。

尾道で暮らす老夫婦(笠智衆、東山千栄子)が上京して、成人した子どもたちを訪ねる。
医者の長男(山村聡)も美容院を営む長女(杉村春子)も、はじめは歓迎するが、やがて両親がじゃまになって熱海に行かせたりして厄介払いする。
唯一、戦死した次男の妻・紀子(原節子)だけが優しい心遣いを見せ、親身になって面倒をみてくれる。
老夫婦は、自分たちの子供たちからはあまり温かく接してもらえなくても不満を表に出さず、子どもたちのじゃまにならないようと早めに尾道へ帰っていくが、子どもたちは両親の心情に気づかない。
やがて帰郷して何日もしないうちに、母危篤状態との電報が子どもたちに届く…。

「欲言ゃきりがにぁが、まあ、ええほうじゃよ。
ええほうですとも。よっぽどええでさ。私りぁ幸せでさぁ」

「じゃあ、おねえさんも?
ええ、なりたきゃないけど、やっぱりそうなっていくわよ。
いやぁねえ、世の中って。
そう、いやなことばっかり」

「私、ズルいんです。
…ズルいんです。
いやあ、ズルうはない。
いいえズルいんです。そういうこと、お義母様には申し上げられなかったの」

映画的完成度では「麦秋」や「晩春」が上だろうが、小津監督の集大成という意味でベストにあげられる作品。
笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子をはじめ、役者がとてもよい味を出している。
他の出演者は、老夫婦の三男が大坂志郎、次女(京子)が香川京子、長男の妻が三宅邦子、長女の夫が中村伸郎、周吉の同郷の老友が東野英治郎…。
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