えいこ

東京物語のえいこのネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この歳になってようやく小津作品をまともに観賞できるようになった。随分若い頃に見たとは思うが、まったく理解できていなかったな。

まだ貧しさも残る古き良き時代。穏やかで礼儀正しい挨拶。老夫婦の朴訥なやりとりにほのぼのしていると、ざらっと触れる怖ろしいくらいのリアリズム。忙しい日常に追われて、せっかく出てきた老親をあっちにやったりこっちにやったり…。いくらなんでも、そこまで雑に扱わないでしょ。尾道に帰るあたりからの杉村春子の言動は、長女あるある。もはや笑ってしまうくらい合理的。自分も長女として反面教師にすべし。

その中で原節子演じる次男の嫁の優しさたるや。東山千栄子が泊まった夜のやりとりには涙した。そして、灯りを落とした横顔の美しいこと。時折見せる笑顔が消えた時の表情が気になっていたが、終盤の義父への告白につながる。その後の京子との会話もよい。美しい日本語も日常の所作も過去のものとなったが、身近な家族の情感はいつの世も変わらず切なく少し可笑しい。

自分も親になり、義理の家族も増えた。離れて暮らす老いた両親が重なる。年をとるにつれ、口には出さない思いがだんだん増えてくる。墓に布団はかけられない…か。
静かで美しい構図と、笠智衆と東山千栄子の並んだ後ろ姿が沁みました。
えいこ

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