半兵衛

森の伝説 第一楽章の半兵衛のレビュー・感想・評価

森の伝説 第一楽章(1987年製作の映画)
3.7
この映画が製作された1987年はジブリやガイナックス、押井守などが新時代のアニメーションを担う者として注目されていた時期で(この翌年に「となりのトトロ」、「火垂るの墓」、「機動警察パトレイバー」、「トップをねらえ!」が発表される)、そんなときに敢えてディズニーの影響を強く受けたこのアートアニメを造ったというのは凄いと思う。
チャイコフスキーの楽曲に合わせて、第一部ではムササビの物語を1900年代の原始的なアニメーションからカラーアニメまでの技術の進化を交えて描いており、こういうあからさまなディズニーやポパイなどのパロディをおふざけにならない程度に取り入れ、それを自分の作風として昇華するという行為は「アニメは愛人」と豪語し、アニメのために漫画の仕事を引き受けた手塚治虫にしか出来ないだろう。
第四部では森の開発をテーマに、フル・アニメーションで描かれる森の妖精たち(やっぱりディズニーアニメ風)が、60年代以降の日本で主流になるリミテッド・アニメーションで描かれた森の伐採を行う作業員たちに追いやられるという現代のアニメ批判的物語。こういうのをストレートにやれるというのが手塚の凄みだけど、だから宮崎駿から嫌われるんだろうな。そしてほんの一瞬だけ出てくるヒゲオヤジ・伴俊作の存在感!
半兵衛

半兵衛