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チチカット・フォーリーズのmiのレビュー・感想・評価

チチカット・フォーリーズ(1967年製作の映画)
5.0
ワイズマンに手を出したら底なし沼にはまるんじゃないかとずっと懸念してきて、とはいえどうせ観るなら1本目からなるべく順に観たいとずっと思ってて、ついに今作を鑑賞。
上映後は三宅唱さん、高橋洋さんのティーチイン付き。

やはりというか、想田和弘監督が影響をモロに受けたというのも頷ける展開。
トラウマ級ドキュメンタリーで間違いない。
想田和弘監督の「精神」はかなり現代版に見やすくなっているのに対し、こちらはカメラが被写体を捉えているが、どこか冷酷に突き放す第三者的な姿勢すら伺える。
この施設の精神異常の患者への施しが、倫理的に間違ってるのかどうかさえ途中からわからなくなるような錯覚すら覚える。
チューブ突っ込まれるおっさんからの死体のカット割りは、確かに未知との遭遇だった。

にしても、戦争をセックスに例えて演説してるおっさんや、自分は薬漬けにされてここにいるから出してくれ!と話す男なんかは全然精神異常者には見えなかった。
事象をひたすら追いかけるカメラワークだが、ラストでワイズマンのシニカルさが全面に出て、後年の観察的手法よりも演出的意図が見て取れた。

あの終わり方は凄い。

患者たちの口から、皆さん楽しんでいただけましたか?楽しいショーはこれで終わり。
でもショーは続いていく。
この意図せず発された言葉の中に、はっきりとワイズマンの恣意が見てとれる。
編集という行為が入る以上、そこには主観や意図が入り込むことを改めて目の当たりにした。

他の作品も観るしかない。


2019劇場鑑賞28本目
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