しろくま

地下鉄(メトロ)に乗ってのしろくまのレビュー・感想・評価

地下鉄(メトロ)に乗って(2006年製作の映画)
3.5
《いつもの地下鉄を降りて、地下連絡通路を歩いていると…》
目の前に死んだ兄に似た少年が現れ、地上に出たら、そこは東京オリンピックに沸く昭和39年だった。昭和の東京を舞台にしたタイムスリップムービー。

父親とは絶縁状態にある長谷部(堤真一)。彼は地下鉄で過去にタイムスリップし若い日の父親(大沢たかお)に出会う。強くて頼もしい父の本当の姿を目の当たりにし、人間味に溢れた父に惹かれていくっていう展開だけど…。父親は、奥さんや子どものことを大切に思っているって語っているのに、プライベートでは妻を殴ったり愛人を作ったりしていて、まるで別人。何故家庭では暴君のような態度をとるようになったのか、そこまで描かないと、いくら昔はいい人だったからって言われても父親との確執が解決されるとは思えないけど…。

タイムスリップするのは長谷部の不倫相手のみち子(岡本綾)も。不倫愛の苦悩を抱えてきた彼女が、禁断の愛に身を置いている自分に気づき、最後に重大な決断をするのだけど…。母にも父にも望まれて生まれてきたことを知った彼女が、前向きに生きていこうって決めて不倫を解消するんだったら分かるけど…。

腑に落ちなかったのは、長谷部がポケットに入っているあるアイテムに気づくシーン。それを見て、ある人のことを思い出して涙するのかと思ったら、不思議そうな顔をしてエンディング。原作も「誰かが、愛情をこめて自分のポケットに忍ばせたものだろうと、真次は考えた」と書かれているけど、それだと、あまりにも不憫すぎる結末。

地下鉄が時間旅行の乗り物に使われているけど、まるでどこでもドア。レールのないとこにタイムスリップしちゃダメでしょ…って、ツッコミどころが多いけど、こういう切ない話が好きで、何度も観てしまう作品。特に岡本綾さんの儚い感じの演技に心が惹かれるね。

視聴メモ:2023.01.11/008/GYAO
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