たか

地下鉄(メトロ)に乗ってのたかのレビュー・感想・評価

地下鉄(メトロ)に乗って(2006年製作の映画)
5.0
 時空を超えた真実の愛の物語を描く、浅田次郎の同名の小説を映画化。“地下鉄”で過去へとタイムスリップした男が、過去のトラウマに立ち向かう。昭和初期の車両を実際に使った地下鉄のシーンや、東京オリンピックの頃のレトロな町並みも楽しめる。
 賛否両論ある映画らしいけど、私はとても価値を感じた。原作は知らないけど、話に矛盾を感じる事なく、引き込まれる様に話が進んでいった。
 まず、なぜタイムスリップが起こったのだろうか?と考えてみた。色々考えてみて、間違って進んでしまった現代を変えるために、一時的に可能になったのでは?と思う事ができた。タイムスリップにより、レトロな東京の光景を楽しむ事もできた。私が生まれる前なのに、懐かしさで心がいっぱいになる。
 そして、戦争が人(父)を変えてしまった事を描いているのだろうか?環境によって自分が望まない自分になってしまった悲しさ、そして、本当に愛する人の前で、本当の自分を表現できない悲しさ...これは現代人にも、大いに言える事かもしれない。
 親子関係は切っても切れない、血は争えない事を描いている。物語上、必要な要素であり、この点を否定するつもりはないが、血によって、人間を決めつけ、人間の可能性を狭め、主体性を奪ってしまうのだけは、嫌だなと思った。
 二人(いや三人、もしかすると四人では?)で、石段から落ちるシーン、とてもショッキングだったが、落ちた瞬間、彼女の気持ちがすーと理解できた。とうとう未来を変えてしまった。主人公が現代に戻って、最初、変わった未来に驚きながらも、徐々に前からそうであったように、変わる前の現代を忘れていくのが印象的だった。やはり記憶は消されて行くのか。
 タイムスリップができる時代はいつやってくるのだろうか?いや、タイムスリップは、必要性がある時にのみ、起こる事なのだろうか?密かに、実際過去に行っている人もいるのかもしれない。過去へ行って、未来(現代)を変えるつもりはあまりないけど、自分の生まれた頃、その頃の両親、見てみたいなと思った。
 明日、地下鉄に乗る時、私はどんな気持ちで地上へ出るのだろうか...。
 そしてその時見る光景は?
たか

たか