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狂気の愛のSPNminacoのレビュー・感想・評価

狂気の愛(1985年製作の映画)
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噂に聞くアンジェイ・ズラウスキー、なるほど凄かった。人を食ったようなディズニーキャラ銀行強盗からアクション、ダンス、爆発銃撃、戦争と破壊、ズレたまま流れるダイアローグ、笑いと炎と血と裸がハイテンションすぎてナンセンス極まれり。いやあ、何かするたびアクロバティックにモノがぶっ壊れるの笑った。
劇中舞台劇とビデオ映像の入れ子構造で物語る人生を狂わされた女と、愛にも暴力にも抗えないハンガリー人の男は、血で血を洗う抗争の中でどこへも飛び立てない。ノワールに置き換えてあるが、主人公がキリスト的受難だったり基本設定はドストエフスキー「白痴」通り。ミッケー(ミッキーマウス)とピンクキャデラック、風と共に去りぬ…とアメリカの影がそこにチラつく。
ルイ・マル、ゴダール、ブニュエルとマルクス兄弟を合わせて更にアクティヴで無秩序なスピードで転がっていく狂気。でも撮影と編集が巧いというか、唐突なアングルや場面の緩急切り替えにグルーヴ感があって面白い。大芝居の背景となるパリ街中のロケーションがまた、なんとも贅沢で絵になるのだ。
俳優は「その場で思いつく限り最もバカなことをしてみろ」と言われて各自競い合うように素っ頓狂な演技をしてたんじゃなかろうか…そう思うほど、若いチェッキー・カリョはじめ全員タガが外れてクレイジー。ソフィー・マルソーはそんな前衛劇場に飛び込んだ若手アイドルみたいなもの(てか、そうだったんだろうなあ)で、頑張ってあのテンションに合わせてる。で、そのままズラウスキー劇場の看板役者兼パートナーになるのもありがちなパターン…。
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