レッドアップル

少女ムシェットのレッドアップルのレビュー・感想・評価

少女ムシェット(1967年製作の映画)
3.9
タルコフスキーの言うとおり、最後の兎狩りはあまりに象徴的でブレッソンらしくない。ルノワールの撮る狩りの方がよっぽどシネマトグラフしてる。
でもそれは自身の思想に対する彼の姿勢が、チグハグだったことを意味しない。きっと確信犯的にそうしてるはず。
なぜならブレッソンは、本作を撮ったあたりから、シネマトグラフの思想すらも並置するような態度を見せ始め、その後先鋭化を推し進めていくから。
本作の兎、『たぶん悪魔が』のアザラシ、『湖のランスロ』の血しぶき、『白夜』の映画内映画など例をあげるとキリがない。森番と密猟者の喧嘩もそう(あのアッパー本当に食らってるだろ)。
ブレッソンは、当時も今も正確な理解を得られていないシネマトグラフの思想を孤独に発展させ続け、誰も追いつけないところまで行ってしまった。