Omizu

笑う蛙のOmizuのレビュー・感想・評価

笑う蛙(2002年製作の映画)
3.7
【2002年キネマ旬報日本映画ベストテン 第6位】
直木賞作家藤田宣永の『虜』を『愛を乞うひと』平山秀幸が映画化した作品。主演の大塚寧々は毎日映画コンクールで主演女優賞を受賞した。

なんともじめじめした薄気味悪い作品だった。いい意味で日本映画特有の湿り気がある。

とにかく大塚寧々がすごい。『ゴーン・ガール』ロザムンド・パイクのような無機質、無表情で不気味な女を妙演していた。ただ受け入れるだけの女、と思いきや夫を匿っても全く表情に出さないし平気で嘘をつく。夫に対して、というか他人に対してどう思っているのか全く分からない。

夫が自分勝手なのは明白だけど、この妻も相当したたか。知らぬ間に周囲を操っていて、しかもそれを自覚しているようなのが余計怖い。勝手に家に押しかけた夫、しかも妻への愛が再燃したのにも関わらず妻に完全に操られてるという皮肉。

人間関係というのは愛だけでは語れないし、憎しみだけでも語れない。その間の、もしくはそれを超えた複雑な機微を捉えた秀作。
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