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カポーティのnmoonのレビュー・感想・評価

カポーティ(2005年製作の映画)
5.0

「ティファニーで朝食を」で名声を手に入れたカポーティ。
彼は、文筆家の集まる華やかな世界では人気者。
面白おかしくその場を盛り上げ周囲の気をひくけれど、観ているこちら側からすると虚栄を張っているようで何処か空虚な感じがする。

そんな中である殺人事件が彼の目をひき、その殺人事件をテーマに文筆を始める。
残忍な手口で殺人を犯した犯人に惹かれていくのは、それが殺人者の一人と似た境遇からくる共感や同情なのか、それとも作家としての欲求なのか…
作家としての欲求と私的な感情とが彼を苦しめていく。

以前観たバードにも通じるこの作品。
表現者というのは、深く一つの世界に入り込んで、新たな感覚や感情を作品に落とし込み作品は生まれるのだと思う。
観る側の私達は、そこに共感したり感銘を受けるのだけど、この作業の精神的な疲労は計り知れない。
カポーティ自身は、殺人犯に入れ込む余り作品に飲み込まれてしまった。

フィリップ・シーモア・ホフマンが、カポーティの一つの事件を文筆する中で生まれる様々な感情を熱演している。
彼も作品に入り込み表現する俳優の人だったように思う。
最後はドラック中毒で亡くなってしまったけれど、きっと繊細な人だったんだろうな。
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