【つよい歌、ぬるい歌人生】
知っていたが何となく後回しにしていた。アマプラで何度もお勧めされたし、これを機に。
1980年作だが、もっと前かと思い込んでいた。おお、ベット・ミドラーがジャニス・ジョプリン的人物を演じた『ローズ』がこの前年か!妙に納得。影響あったのだろうか?
再度見ないと断言できないが、『ローズ』の方が、映画としてはよくできていたと思う。
何だか、物語としてはのっぺりとして、オチがない。女神的扱いだったろう人物の自伝が原作で、本人存命中だし、これくらいの中庸チューニングが必要だったのだろうか?
ダンナ主導で、夫婦だけで売り込んだように描かれ、共感し易い面もあれど、実際は早い段階でレコード会社の目に止まり、プロのノウハウやツテがあってこそ、売れたようですね。
あと、売れたゆえのメンタル危機はあるあるだけど、表面的混乱を追うだけで、因果関係を掘り込んでくれない。物語的にはヤマなのに、なあなあで終わって拍子抜けしました。
楽曲もいいのに、使い方にメリハリがなくて。メドレー的まとめ紹介なんて、手抜きじゃね?女の本音を込めた歌詞など、時代に先んじていたことを表すエピも欲しかったなあ。
物語的な肩透かしは他にもありますが、大きくはその辺りで心の体温、下がりました。
マイケル・アプテッドって、メジャー作をそこそこ撮っていて、名前は覚えていたが、映画が面白かった記憶がない。ただ、いい主演女優に当たる確率は高いみたいね。
シシー・スペイセクは自然な演技ですんなり共感できる。声がスゴくいい!ロレッタ本人に似せたのか?歌は当然、本人よりは落ちるが、映画内ではちゃんと説得してくれる。
トミー・リー・ジョーンズは、やっぱりオジサン化後・宇宙人ジョーンズの印象が強く、ここでは美青年っぽく、特殊メイクしているように見える。変!…いい味は出してますが。
オラオラ亭主だけど、必ずしも悪いことだけじゃないって話ね。彼がロレッタの歌に惚れ込み、強引に背中を押さなかったら、彼女も歌手になれなかったかもしれぬわけで。
ビヴァリー・ダンジェロは、名前は覚えているのに映画は…。彼女も、歌手でもあったのですね。自力であそこまで歌って流石。この頃はまだ、エンターテイナーが多かったような。
ロレッタ・リンもパッツィ・クラインも、本人の歌を聴いてみると、明らかに艶がちがう。が、映画内ではこれくらい聴ければ充分。60年代の女性カントリーって、軽妙さが魅力だったのかと学べる。だから女優力が高ければ、ある程度聴けるレベルになったのかなーと。
枯れた季節と雲天で、まさに寂れを醸す炭坑に始まり、当時の再現はずっと眼を引く。雨天決行の、“傘さしてライブ”なんて、萌え!70年代のファッションの様変わりも楽しいよね。
などなど、見どころは多々あったものの、ステーキだと思ったら結局、お茶漬け映画だったので、腹八分目にて終わりました。
<2023.4.27記>