更生と犯罪への誘惑との狭間に悩む元犯罪者のシリアスなドラマを、軽快なラブコメに仕上げてしまった珍味のような作品。でもこれが詰まらないかというとそうではなく、結構楽しいので評価に困る。
真人間になろうと必死で頑張る元犯罪者の主人公をジョージ・ラフトが好演、いかにもギャングという面構えも更生者役にぴったり。そんなカタギなラフトが恋人の一挙手一投足に笑ったりハラハラしたりする姿がどこかぎこちなくて愛らしい。悲劇的なヒロインの印象なシルヴィア・シドニーも本作ではどこか陰があるが明るく前向きな女性像を好演、ラフトとのやりとりも息がぴったり。
前半は笑いどころが多くてほとんどコメディ、でも低俗なところへ行かずあくまで上品な雰囲気でおさまっているのはラング監督がこういう上品なコメディを得意とするルビッチと同じくドイツ出身だからか。
それがシルヴィアの思わぬ一面をジョージが知ってしまってから一気に犯罪ドラマの色合いが強くなる、そこから悲劇的な結末へ流れていくのかと思いきやまさかのシルヴィアの奮闘ぶりで話が変わっていくことに。でも強面の男たちが美女の理論で納得して犯罪を放棄する展開は変だし、そこから『サザエさん』みたいな登場人物みんなで笑いあうほっこりエンドになるのも腑に落ちない感覚がもたらされるのも事実。でもそういうのを含めて妙な面白さがある。
冒頭の『Mr.Boo』みたいに生きることのしんどさをリズミカルに説く歌が印象的。
原題よりも、邦題のほうが作品の雰囲気に合っているというのは珍しいかも。