櫻イミト

110番街交差点の櫻イミトのレビュー・感想・評価

110番街交差点(1972年製作の映画)
4.0
「黒いジャガー」(1971)「スーパーフライ」(1972)と並び称されるブラックスプロイテーションの傑作。主題歌はタランティーノ監督が「ジャッキー・ブラウン」(1997)で、スコセッシ監督が「アメリカン・ギャングスター」(2007)で再使用。製作総指揮と主演は「道」(1954)のアンソニー・クイン。原題の「Across 110th Street(110丁目の向こうに)」。110丁目はミッドタウンとハーレム街との境界線。

白昼のニューヨーク・ハーレムでマフィアの金30万ドルが奪われ、警官を含む7人がマシンガンで射ち殺された。犯人はハーレムの貧しい黒人3人組。彼らを追う人種差別者の白人と黒人の刑事タッグ、抗争中のイタリア系マフィアと黒人ギャングが絡み合い、暴力に満ちた三つ巴の追跡劇が展開する。。。

久々にハードなクライム・アクションを堪能した。犯人の一人が殺傷力の高いマシンガンを持っているのが本作の強みとなっている。

全編ハンディカメラのザラザラとした実録風味の画面。全編ハーレム・ロケの薄汚れた暴力ストーリーがソウル音楽にのせて活写される。前半はどの場面も人間がごちゃごちゃ、後半は廃れたハーレムのビルがごちゃごちゃして、常に臨場感にあふれている。クライマックスがハーレム街の屋上となる映像的な起承転結も見事。

白人と黒人が口汚く罵り合い殺し合う様子は、何にも遠慮しない突き抜けた爽やかささえ感じる。クライマックスの手前で西部劇の映るテレビを叩き割るシーンは象徴的だ。西部劇のような差別と欺瞞に満ちたものではない、本物を観せるぞという魂のゴングが聞こえてくるようだ。

日本の実録暴力映画「仁義なき戦い」は翌1973年の公開。深作監督が本作を観ていたかどうか調べたがわからなかった。
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