凄く良かった。
初長編でこのクオリティとは、流石としか。
傷をどうやって癒すかなんて誰にも分からないし、気づいたら癒えていたり、そう思えばまた不意に襲ってきたりする。私たちはただ嵐が過ぎ去るのを堪えるしかない。でも、傷を背負っているのと同時に、大切なものもできていく。それらが新たな生きる糧にもなるし、歩み出す勇気にもなる。後半、主人公が、再婚した夫の前妻について聞くシーンがあった。最愛だった前妻を亡くした後に、どうして自分のような女と再婚したのか、と。このシーンを見たとか、不思議とこの人はもうきっと大丈夫だと感じた。きっと、幸せな家庭で、幸せに生きてけるって。
生と死があり、生に残された我々は、嫌でも死を考え続ける。見えない、聞こえない、嗅げない、触れられない死について、考えを巡らせる事でしか、死の側に行ってしまった愛する人と繋がることはできない。それももちろん、必要なことかもしれないが、せっかく生きているのだから、できるだけこの世界と繋がっていた方が良い気がする。大切にできるものを、もう一度探して、残る理由を自分に与えなければいけない。