豚肉丸

ラルジャンの豚肉丸のレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.7
学生が作った一枚の偽札で、ある一人の男の人生が決定的に壊滅するお話

滅茶苦茶面白いし凄すぎる。ロベール・ブレッソン監督の作品は共通してカットの繋ぎの流れが綺麗で、文脈を観客に想像させることが多かったが...この映画はまさに彼の演出の極地とも言える。徹底的に無駄を削ぎ落とした演出、構図が整ったカット、繋ぎの流れが美しいショット、印象付けるように何回も登場するお金の手渡し場面、そして一切の救いもない終わり。彼の映画の中では一番『バルタザール、どこへ行く』が好きだったがこの映画が更新した。凄すぎる。

主人公が自殺未遂をする場面。
独房に入れられた男は、刑務官から睡眠薬を二錠渡される。その二錠を受け取った男は錠剤を飲み込まず、部屋の隅に隠している新聞紙の包みを開ける。その中には今まで貯めてきたであろう多くの睡眠薬の錠剤が入っていた。
カットし、舞台は元々男と同室だった人の視点に移る。彼が部屋のカーテンを開くと、外では救急車が待機していてその男が救急車に運ばれる...
終盤のある場面でもそうなのだが、意図的に決定的瞬間を見せず文脈を観客に想像させる演出が上手い。その演出は終盤のある場面で凄く効果的に活用されるから絶対に狙っているんだろうな...と。

そういえばロベール・ブレッソン監督の作品の中で刑務所を扱った作品では『スリ』があるけど(『抵抗』はまだ見てないので知らない)この映画は刑務所内での愛と希望を描いた...珍しく希望が見える映画であったのだが、『ラルジャン』は『スリ』と全くの対照的である。『スリ』を全否定するような展開に思えたけどどうなんだろうねこれ。
廉価版BDも発売されたし買おうかな...欲しいな...
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