Uえい

ラルジャンのUえいのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
3.5
前から気になっていたブレッソンの遺作。タイトルの意味は"お金"で、ニセ札から物語が始まる。

ある青年は友人に借金を返すため、写真店でニセ札を使い現金を得る。その偽札は別の支払いに当てられ、イヴォンは知らないまま使用し逮捕される。釈放されたが職を失い、銀行強盗の手伝いをしたために刑務所に入ってしまう。

写真店で働いていたルシアンはわざとイヴォンにニセ札を掴ませていた。ルシアンはお店の売り上げを着服して解雇され、お店の金庫破り、スキミングなど悪事を働き、イヴォンと同じ刑務所に入る。

ルシアンは罪悪感からイヴォンを脱獄させようとするが捕まり、イヴォンは刑期が過ぎ釈放される。親切な未亡人に救われるが、再び犯罪を犯してしまう。

「スリ」と似ていて、あちらは行為を描いていたが、本作はお金自体を中心に描いている様に感じた。現代の資本主義はお金で成立しているが、ニセ札は現代社会を転覆させる最大のカウンターだ。そして、その罪がいつ自分になすりつけられるか分からないというアノミー的な状態への恐怖も感じる。

ルシアンはお金を困っている人に分けるために強奪すると主張する裁判のシーンがあったが、アナキストの相互扶助的思想も感じた。似た主張はスリでも出てきた記憶で、ブレッソンの思想に近いんだろうか。
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