ぺんちゃん

戦場のメリークリスマスのぺんちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

坂本龍一さんを偲んで。
と言っても『energy flow』くらいしか知らないのだけど💦
思いのほか、坂本龍一さんががっつり出演されていて驚いた。
晩年の白髪のイメージしか無かったけど、とても整ったお顔立ちですね。
お公卿様のような出で立ち。
それ故に、何を考えているのかよく分からない人物。

デヴィッド・ボウイって、かっこいいな!

「俘虜」ってなんだ?と思ったけど、「捕虜」と同義とのこと。
そういえば大岡昇平の『俘虜記』、国語でやったな…
この映画は逆バージョンというか、捕まえた外国人俘虜を収容しておく日本軍基地のお話。

普段見ないジャンルの映画だし、古いし、大島渚監督ってなんとなく苦手…と思ってたけど、何故か惹き込まれて、最後まで飽きることなく見てしまった。

英題の『Merry Christmas, Mr. Lawrence』、どういう意味かと思っていたけど、最後の回収の仕方がとても見事だった!

北野武さんって、本当に当時の日本人のエッセンスを凝縮したような存在だなと思った。
小柄で、農民臭くて、小心者で威張っていて、でもやっぱり情に厚い。
金髪イケメンに「ファニーフェイス」って言われてる笑
戦争という熱に浮かされていた、ロレンスの言葉を借りれば、「被害者のひとり」。あんなに殴られていたのに、そんなふうに言えるロレンスはすごい。
「戦争に勝ったことをうれしく思えない時がある」みたいに言っていた。
立場が逆転したハラ軍曹を前に、そんなことを言えるのは「友情」という言葉では足りないなと思う。

一方のヨノイ大尉は、何を考えているのかわからず、プライドが高くてヒステリック。これもまた日本人らしい気がする。珍しく自分の話をした場面では、226事件に行けなかったのを悔やんでいる様子だった。
ちょっと前に三島由紀夫の『憂国』を見たけど、あれも226事件に行けなくて死ねなかった青年将校が、妻と共に自決する話。当時の日本人(軍人)にとって「226」「切腹」への畏れと憧れという部分では共通するなと思った。

印象的だったのは、俘虜を犯した罪で処刑されたカネモトの切腹シーン前後。カネモトというから日本人兵かと思いきや、朝鮮人軍属。
殴りながらも「自決だと恩給が出ない。家族のために、戦死(事故死)と報告してやる」というハラ軍曹は、厳しさと優しさが滅茶苦茶だなと思いつつ、当時の感覚ではそうなんだなと。。
その場に集められた俘虜達にとっては『切腹』という概念がないから、「なんて酷いことを」という感覚だし、「切腹から目を背けた罰として『行(断食)』を行え」という命令にも「空腹が気持ちを強くするなんてバカげてる」と。
そうだよね。思想(価値観)が違うってそういうことだよねと、驚きつつ納得。

坂本龍一さんが手懸けたという主題歌、ジブリの曲かと思った!
ジブリで、枯れていた森が次々と緑に変わっていく映像や、『トトロ』で木々が少しづつ伸びていく映像に合いそう。
「再生」とか「癒し」というテーマを感じる曲だった。
ぺんちゃん

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