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戦場のメリークリスマスのTのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
5.0
すごい映画だな…
知識という意味でも、人生経験という意味でも、色々なことを知るたびに見返そう…

自分はずっとロレンスの目線に共感して見ていたように思う。日本軍に対する"何が彼らをこんな状態にさせてしまったのだろうか"という哀れみと同情の目線。
自分にとってはロレンスが主人公かも。
「君はふざけるような男ではない」
「お前らの汚れた神のせいだ」
「私は呪う、お前らの神々を呪う」
「日本人はあせってた、個人では何もできず、集団になって発狂した」
「私は個々の日本人を恨みたくない」
「あなたは犠牲者なのだ」
ここまで罪を憎んで人を憎まずなのか…人への愛が深すぎる…ロレンスには敬意しかない。

戦時下がどれほど狂気にまみれていたのかは大岡昇平『野火』とか、野間宏『顔の中の赤い月』とかを読んで少しだけ知っていた。
だからこそロレンスに共感できたのかも。
この事前準備がなかったらただ日本軍を憎んでた気がする。


ヨノイも自分がやっていることの正当性なんてもう分からない。
俘虜を丁重に扱いたい気持ちもある。彼らを辛くさせるなら自分も…という意識もある。でもこれまでの整合性を保つためだけに腹切りをさせる。俘虜への愛憎がぐちゃぐちゃ。
こんな狂気の中で、決して自分を見失わないセリアズにすがるように惹かれていく。ホモフォビックな感情は他の俘虜に当たり散らして発散する。ずっとぐちゃぐちゃ。
埋められて酷い顔になったまま死んだセリアズを足元に敬礼する一連のシーンは妖しいくらい綺麗。

ハラもそう。俘虜を見下しているがなぜか愛嬌もある。この雰囲気をまとう北野武すごい。

最終的にはなぜか自分もセリアズやロレンスに赦しを乞うような気持ちで見ていた。
多分自分が徴兵されたら映画の中の日本軍みたいになる。相手への罪悪感で押し潰されそうになったら、その感情を見なかったことにするためにより過激な仕打ちを与えて、それでも自分の心は平気であることを証明しようとすると思う。

赦しを乞うことに性愛が重なっていくというのも、感覚として分からなくはない気がしている。
結局見てるこっちがぐちゃぐちゃ。
この映画はどう受け止めたものか…。
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