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カルメンという名の女のノのレビュー・感想・評価

カルメンという名の女(1983年製作の映画)
4.6
最初のうちは、ずり上がったり、ずり下がったりで、四重奏や波音が前後の画面にちょっかいを出している程度なのだけど、いつの間にかボリュームが大きくなっていき、全体に覆いかぶさってきて、、と思ったら、急にぴたっと止まったりもする。何のこっちゃという感じだが、やがては法廷の音までもがずり下がり、四重奏の音をかき消し、カモメの鳴き声なんかが入ってきたりする。このハチャメチャさ加減には唖然とするしかない。

『パッション』では光の在り方が、作家の光を模索する姿がそのまま「光の映画」として作品の魅力になっていたけれど、本作の場合、率直に「音の映画」と呼んでいいのか、いささか戸惑いを覚える。やはり、どちらかと言えば「ショットの映画」(=光と反復される波の映画)なのである。『パッション』よりも明らかにくだけた意識で臨んでいそうだけど、“撮れている” からギリギリ形になっているという超スリリングな映画でもある。

さして重要なポイントだとは思わないが、いくつかメモを残しておきたい。マルーシュカ・デートメルスが法廷での何かを朧気に思い出す、中盤とラスト。ミリアム・ルーセルのパートは白バラ、赤バラ、ホテルのロビーで微かにリンクしてくる。病気の映画監督であるゴダールは櫛で自身の少ない髪をとかし、無関係の人の髪までとかし、迷惑がられて退場する。
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