ボブおじさん

狂った果実のボブおじさんのレビュー・感想・評価

狂った果実(1956年製作の映画)
3.9
原作者の石原慎太郎が脚本を担当し、弟の裕次郎の主演を条件に映画化を許可。更に裕次郎の弟役に16歳の新人の津川雅彦を連れてくるなど、当時この新進気鋭の作家が、いかに世の中に影響力を持っていたかが、伺い知れる。

ちなみに津川雅彦という芸名も慎太郎の「太陽の季節」の主人公を元に彼が名付けた。(「太陽の季節」の主人公は津川雅彦の実兄長門裕之)

いわゆる〝太陽族映画〟の最高傑作で、監督の中平康がモーターボートの疾走シーンなどで見せる卓越したカット割と繋ぎのセンスが冴えまくる。

〝太陽族〟と呼ばれ暇をもてあましたかのような裕福な若者たち。その兄弟と、一人の魅惑的な女をめぐり破滅的な物語が展開する。遊び慣れした兄に比べて純真な弟が、ある女と恋に落ちた。兄は女が米軍将校の妻であることを嗅ぎ付け、弟を想う気持ち半分と嫉妬半分で女を無理矢理自分のモノにする。弟を愛しつつも、力強い兄の肉体に惹かれていく女。ついに真実を知った弟は、兄と女を乗せたヨットを捜し、復讐の一打を与えるべく、夜の海にモーターボートを疾走させる……。

当たり前だが、いつの世にも青春時代は、存在した。当然自分が生まれる前にも。

慎太郎も裕次郎も津川も岡田も北原もそして日活も若かった。自分も青春時代を過ごした逗子・葉山の海を舞台に日本映画が上を向いて躍動している。その中心に23歳の慎太郎と21歳の裕次郎がいる。

古い映画だと思って舐めて掛かるとあなたはきっと痛い目に遭う😊



〈余談ですが〉
批評家時代のフランソワ・トリュフォーを熱狂させ、彼の推薦によって、この作品はシネマテーク・フランセーズに保管される日本映画の第1号となった。

本作は、フランス・ヌーベル・バーグ映画にも少なくない刺激を与えたと言われており、特にクロード・シャブロルが監督・脚本した「いとこ同士」は、間違いなく本作に大きな影響を受けている。