TaiRa

真田風雲録のTaiRaのレビュー・感想・評価

真田風雲録(1963年製作の映画)
5.0
初劇場で再見。人生ベスト。ヌーヴェルヴァーグ時代劇。

隕石が落ちて来て超能力者になった猿飛佐助(中村錦之助)が仲間と出会って真田幸村と共に大坂の陣へ向かう、というSFミュージカル時代劇。なんか雰囲気は岡本喜八っぽい。戦争映画でもあるんだが暗さはない。でも悲しさはある。死に場所を求めて戦へ向かう真田隊の歌声が明るく元気で、だからこそ泣ける。「やりてえことをやりてえな/人間わずか五十年/てんでカッコよく死にてえな」千秋実の真田幸村も最高。頼りなさそうに見えてめちゃくちゃ出来る男。最後までシリアスにならない。中村錦之助の漫画主人公然とした佇まいも素晴らしいし、渡辺美佐子との恋愛描写も切なくて最高。手を離す瞬間のディティールとかブレッソンかよってくらい美しい。戦中世代の加藤泰が描く戦争。政治の駒にしかならない人間の悲哀。誰かの為でなく自分の為に戦い、そして死にたいと願う者たちの姿。それに対する佐藤慶の存在感よ。冷酷な男でありながら、非常に複雑な存在。大坂冬の陣から夏の陣までの休戦状態下でしびれを切らし、豊臣軍みんなでダンスパーティーを開く場面と、人知れず殺し合いを繰り広げる猿飛佐助と服部半蔵という構図が良い。佐助と半蔵がいつしか兵士として戦争に消費される虚しさを達観しながら共有するのも良い。戦いを通して生の実感を見出せる唯一の相手。生きるって事は何かを突き付ける台詞の数々。ほぼ全ての台詞がカッコいい。ラストで生きる意味を振り絞る姿も切なくて、その後の空撮も完璧。
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