大人になってから久々に鑑賞したが、主人公の魔女が空を飛ぶ様子を危なっかしくも動きのエロチックさを存分に発揮したアニメや絵画のような背景の数々が魅力的なことを再発見して本編よりもそっちを楽しんでいた。ラストの飛行船のやりとりもよくここまでやるなという変態的な完成度がありため息が。
ただストーリーがプロレタリアアートだったり、少女を主人公にした意味など色々深読みするようになってしまったのは自分がファンタジーを純粋に楽しめない汚れてしまった大人になったということなのだろう。でもこの作品の輝きがそれで失われたというわけではなく、これからも宮崎駿マジック目当てに見てしまうのだろうし、未来の子供たちをオーパーツなテクニックで虜にしていくのだろう。
大きな飛行船に乗るのを徹底的に拒否するキキの姿に宮崎駿らしさを感じた、彼にとってあれは資本主義の(それだけのところでなければきっとこれほどのサイズは作れないはず)象徴で労働者を搾取する物でしかないのだろう。
あと出演している声優の方々が脇役も含めてレジェンド級の面子ばかり揃っていてビビる、特に主役二人がコナンと工藤という因縁のある組み合わせで今も現役として頑張っているのが感慨深い(実は高山みなみと山口勝平はこの作品以前に『らんま1/2』のOVA版で共演している)。
でも労働者の見本としては理想的すぎて、観賞後酒と『センチュリアン』で余韻を消してしまった自分が悲しい。