ワンコ

魔女の宅急便のワンコのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
5.0
【ドローン配達の株式会社キキです】

地上波テレビ放送はなんと17回目なのだそうだ。

他のジブリ作品のテレビ放送回数を知らないのだけれども、すごい回数であることは間違いない気がする。

映画「風立ちぬ」を観た時に宮﨑駿さんがこの「魔女の宅急便」を撮るのは必然だったんだと考えたことも思い出した。

そして、公開からこの「魔女の宅急便」を何度か見返しているうちに、あー、これは新社会人や、初めてアルバイトをするとかそんな若い人の心に刺さる作品だよなあと考えるようになっていた。

それは今でも変わらない。

ユーミンの歌での入りが印象的で、バブル経済の時の公開だから当時は何でもユーミン使えば良いと考えていたじゃないなんて意地悪なことも思っていたが、あれも初めてのドキドキを歌っていたのだから、上っ面でしか物事を考えられないのは良くないもんだと反省した記憶もある。

まあ、アルバイトも仕事も、お客さんの想いも、出会いも、思いがけない他人のサポートやヘルプも、友達関係も、その他のあれやこれやも、失敗も感謝も楽しいこともあるのだと当たり前のことをこの作品は描いているのだけれども、背中を押されたり、元気付けられる人は沢山いるに違いないと思う。

それにやっぱりキキが魔法を失いかけた時の焦燥感から想像するスランプや、自信の喪失感、そんな時は出来ることをするしかないということ、そして、いつかは自分の方向性を考える瞬間がきっとやってくるに違いないと考えることも皆が経験することだしね。

真っ直ぐ飛びなさい!じゃないと燃やしちゃうわよ!

そんな気合いも大切だったりする。

角野栄子さんは映画「カラフルな魔女」でジブリのキキとご自身の描いていたキキは少し違うと笑っておっしゃっていたけど、ご自身の作品以外で独り立ちして育つキャラクターがいても良いと考えているのか、気にしている様子はぜんぜんなかった。
ポジティブな方なのだ。

今は、SNSに閉じこもって当たり散らしてないで外に出る出たらどー?なんて思うことも多いが、それを職業のようにして、お金を稼いでいる人もいるので、まあ嫌な世の中になった感じもする。

そして宅配やデリバリーは溢れてて、皆もう少し外に出た方が健康的じゃないなんて考えることも増えて、昔は宅急便の担当の人とたまに会っても、同じ人だと確認もできて、挨拶も当たり前のようにしてたのに、今はボックスや玄関前とか、会っても挨拶どころか言葉を交わす時間も勿体無いような感じで、便利になったけど、こんな世の中を僕たちは欲していたのかと考えちゃう。

もう配達はドローンで…「ドローン配達の株式会社キキです!」みたいな未来が近づいているのだろうから、その時代時代で、この作品を見返して、人と人のコミュニケーションをその時どう感じるのか想像する時代になってしまった気がする。

そんなことも実は楽しい作品。
良い作品だと思う。

途中、キキが”あなた綺麗ね”と言われる場面があるのだけれども、キキは時代を経てもやっぱりかわいいと思う。
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