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魔女の宅急便のzomychanのネタバレレビュー・内容・結末

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『新しい出会いと小さな挫折…13歳の新米魔女・キキの成長物語』金曜ロードショーのサイトにはこんなタイトルが記されていた。久しぶりに見た『魔女の宅急便』はセリフがドラマチックだったり、登場人物がいちいち優しかったりして、私は気持ちよく笑った。しまいには、トンボの窮地にキキがデッキブラシに乗って助けようとするシーンで街じゅうの人が「がんばれ、がんばれ」と応援し、二人が助かって皆歓喜に満ち溢れて、あまりに悪い人が誰も見当たらないもんだから、泣いた…。

同上のサイト内に掲載されていた製作裏話の中に、登場する女性たちは各年代を代表する女性として描かれており、根本的には一人の人物が成長したものというのがあって、すごくいいなと思った。13歳のキキにもっとも年が近かった頃に初めて見ただろうこの作品、今一番現実の私と年が近いのはグーチョキパン店のおソノさん26歳。キキも、18歳の画家ウルスラもそうだが、おソノさんの「はっはっはっはっ」という気持ちのいい笑い声が特に私は好きである。あんな風に気持ちよくキキの不安を笑い飛ばせたり、ちょっとキキに気を利かせてトンボのところへ届け物を配達させたり、トンボを助けたキキに「えらいねぇ」と涙を流せるおソノさん大好き。歳なんて自分のやっていることややりたいこととは関係ないと思いつつ、私は自分が想像している以上に早く数字を重ねていくことに、近年驚きを隠せない。だから今回、一喜一憂一生懸命頑張るキキをサポートするおソノさんの立ち位置がすごく大人に見えてしまった。今の私はキキの状態よ…思春期なんてとうの昔に終わっているはずだけど、まさに一喜一憂。なんか自信がついたみたぁい!とコロッと言い放てる能天気な時もあれば、ぽろりと弱音を吐くことも、感情をむき出しにして攻撃的になることもある。感情に振り回されて忙しい。

新しい場所で新しい自分を見つけないといけない時は、誰でもあんな感じなんだろうか。キキは自分が何かできるときには一生懸命相手と向き合って、窮地に陥れば人と出会い、素直に困っていることを伝える/相手に汲み取ってもらうことで乗り越えた。少なくとも自分の内側に閉じこもらない。

新しい土地で文句をたれても指摘してくれる家族同然のジジ、パン屋の仕事を手伝う代わりに住環境と緊急時のサポート、キキの仕事場(?)を提供をしてくれるおソノさん、自分のことを信頼してくれるお客の老婦人、自分とは全く違う生活をしているけれどどこか共通の価値観を持つウルスラ、同世代で気兼ねなくいつも気にかけてくれる友人(?)トンボ、近況を報告する故郷の家族。数は多くないけれど、何かあったら助けてくれるという存在を元気なときに作るのが大事なんだなぁと、真面目に学ぶ…。

ウルスラがキキと山の自宅に向かう際の道中、ヒッチハイクのシーンで「なによ、この美人が目に入らないのかしらねぇ」「ああー、この脚線美がわからないとはねぇ」というセリフがあって、このマインドも好きだった。夜に横たわりながらキキとおしゃべりするシーンでも自分と対話しながら向き合って理解しようとしている感じがセリフから伝わってきて「私もそういう生き方、する……したい……」と思った。

子供のためのアニメーションだからか、いい人でも悪いところがあるはずなのにそういう人間のムラが全くないように感じた。だから見ててもストレスフリーなんだろうな。すごく楽しめた。コロナウイルスのせいでものすごく気が立っていたから、ケラケラと笑い声を聞けたり、異国情緒漂う眺めのいい街並みを見れてよかった。あと、キキが空に飛び立つときの音がなんだか気になった。空を飛んでいる時の音といえば、私の中ではアンパンマンのヒーローたちが地面から飛び立つ時の音だ(表現しにくい)。だけど、キキが空に飛び立つ時や飛んでいる時の音は、風だったな。
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