南森まち

あの頃ペニー・レインとの南森まちのレビュー・感想・評価

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)
2.6
ロック誌のライターになった少年がバンドのツアーに随行し退廃的な姿に直面する…というお話。

16歳で「ローリング・ストーン誌」のライターになった監督の自伝的な作品。
自伝的な内容なので、リアリティはあるけれど非常にセンチメンタル。そのため一定層以外には伝わらず、映画としてあまり面白くない。
1960〜70年のポップスがたくさんかかるのが本作の魅力のひとつなのだろうが、そちらに疎い人には伝わってこない😅思い入れのある方たちには大ウケなんだろう。実際、アメリカでは数々の賞を受賞し、興行収入のほとんどが英米だったようだ。
そして本作の成功が21世紀初頭の米ポップス映画ブームのきっかけと考えると、その罪は重い…😑

原題『Almost Famous』は「ブレイク寸前!」のような意味なので、思い切って改変しています。少し古い表現なのも、時代を表していてカッコいい。
でも実は映画の扱うテーマはヒロインのペニー・レインではなく、原題通りロックバンドだったりするのだ。
サザンオールスターズの『すべての歌に懺悔しな!』のように、ロックだ何だと言って女と薬に目がない歌手たちを批判し、それでも愛し続ける(?)物語になっています。

人種差別やベトナム戦争などの抑圧からの解放を謳って隆盛したロックンロール。しかし70年代中盤には主張すべきテーマを見失い、その魂は滅びつつあった。
音楽業界の主導権を握ったテレビや雑誌が次から次へと新しいバンドを売り出し、若者たちから効率よく集金する。
当のアイドル化したバンドマン達も熱狂的な女性ファンに囲まれ満足し、先人達を見習ってクスリと酒と性欲におぼれていく…。

主人公の少年は厳格な母親への反発からロックに傾倒し、そんな時代のロックミュージック業界に入る。そして15歳の彼にとって魅力的に見えていたバンドマンたちの、自分勝手で欲望と虚飾にまみれた姿に直面する。しかし少年は、彼らの声を読者に届けるライターになるため、彼らの良き仲間であろうとするのだ。

そんな中、彼は取材対象のバンドのグルーピー(追っかけ)の親玉的存在、「ペニー・レイン」(ビートルズの楽曲名)と名乗る少女にだんだん惹かれていく。しかし、彼女は彼の取材対象のバンドのリーダーと付き合い始めるのだった…
互いに本名も知らないグルーピー連れのツアー一行。彼らの退廃的な旅はどこで終わりを迎えるのか。

もう少し主人公がペニー・レインのどこに惹かれたかを描いて欲しかった。でも主人公は15歳の少年なので、ちょっとミステリアスな美人で年上のお姉さんってだけで充分…なのかな?😅

しかし「ロックミュージックの本質は失われた!商業主義はロックじゃねぇ!」という自分の主義をもとに、当時のはやりのナンバーを取り入れた商業主義な映画を作るんだから、監督は図太いな😅