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あの頃ペニー・レインとのmadokaaaのレビュー・感想・評価

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)
3.8
『産業ロック』なる言葉が浸透し始める70年代前半のアメリカが舞台。

ツェッペリン、ザ・フー、クリーム、イーグルス、デビッド・ボウイ、ボブ・ディランなどおなじみの名前が続々と登場し、70年代の音楽目録としても楽しめます。

それからバンド・エイド(グルーピー)たちの当時を物語る退廃的な雰囲気、古き良きアメリカの街並み、センスの良い衣装、そして音楽。

バンドに限らず何かを盲目的に愛してしまった経験がない人がいたとしたら、このセンチメンタリズムを笑うかもしれません。

ただ「あの頃・・・」という言葉が蘇らせる、あの日の、胸がぎゅっとなる感触を一瞬でも呼び起こしてくれるのがこの作品。

映像的には、夜明けの砂漠をツアーバスが走る場面や、冒頭のサンディエゴの町、こういった情景がいかにもロードムービー風で、アメリカで育っていない私でさえ懐かしさを感じるほど。

ロックを俗悪な音楽と決め付ける母親の存在も良いスパイスになっていた。

60年代のヒッピーやフラワーチルドレンといったムーブメントが、70年代に入り時代の波に飲まれ衰退していく混沌感、その狭間の『時』を感じることができます。

とにかく、これぞ70年代という空気感で、刹那的でありなりながらも若者のエネルギーに溢れている。

当時の社会的背景を踏まえると、感性の解き放ち、自由への渇望、そういった対抗文化が生み出すフラストレーションの代弁こそがロックであり、彼らが狂騒的に陶酔する心情も大いに理解できます。

ちなみに対抗文化で言うと、あの伝説的イベントであるウッドストック・フェスのトリを飾ったジミ・ヘンドリックスのパフォーマンス。

即興的に国民の誇りである『星条旗』を演奏し始めたかと思えば、ギター1本でベトナム戦争を表現した彼。

カウンターカルチャーの象徴として、神々しいほどの演奏をしてのけた。

革命精神に満ちたすごい時代。
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