ねぎおSTOPWAR

アメリカン・ギャングスターのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

4.1
リドリースコット監督。
DVDに劇場版とエクステンデッドエディションがある。まあ映像へのこだわりが凄い人。ここまでディレクターズカット版とか色々出す人は多くない。配給側の要望などに妥協するものの、割り切れずに固執するタイプなんでしょうね。それはいまだエイリアンに思いがあり、プロメテウス作って尚コヴェナント作ることにも表れているのでは?

冒頭
1968年。フランク(デンゼルワシントン)に説教するボス、バンピージョンソン。街の進化、移り変わりに、商店の誇りはどうした?ディスカウントスーパーは製造元から直接仕入れるから中間業者の必要がなくなってしまう。ソニーか東芝はアフリカ人の仕事を奪うと。一見よく聞く経済論だが、ギャングがピンハネすることが出来にくくなっていることを嘆いてる?
実はこのシーン、映画のストーリーの骨子に関わる重要な部分です。

バンピーの死後、周囲の変化の中タイに向かうフランク。「ヤクを生産元から仕入れる」と、ディスカウントストアの考え方を応用。
実話ベースなのに、こんなドラマティックに(当時における)現代ギャングが登場するのが面白い!

当時の社会の腐敗は警察組織にも及び、世の中クスリ天国。それがフィルムノワール、アメリカンニューシネマとつながるわけですが、皆自分第一主義。
フランク(デンゼルワシントン)もまた家族と友人を大切に守るが、敵は殺すし社会は御構い無し。
一方ラッセルクロウは警察仲間すら違法なことは許さない代表のような堅物。
この対比で見せて行くわけですが、んっ?これってイタリア系ギャングものと一緒じゃん!って実話ベースなんだから仕方ないか・・。

ただフランクが無垢なところが、話としては面白いですかね。小さい頃から弟達のために働きに出て、ギャング社会しか知らない。たぶん普通の会社入ったら出世したんでしょうね、才覚がある。そして「質の高いものを提供する」と、ヤクなのにビジネスマンみたいな口をきく。

最後、フランクにとっては別に家族でも友人でもない奴らを売っていく。こいつにはヤク売ったよ。この警察はワイロ受け取ったよと。その数の凄さにビックリですがね。

この締めくくり、実は公開バージョン観た人は、このあたりの心境いかばかりかと思ったことでしょう。
是非DVD📀blurayのエクステンディッドバージョンご覧下さい!こっちが断然素晴らしい!
劇場での上映時間を考えた製作サイドの意向だろうが、2017年にドゥニ ヴィルヌーヴに3時間与えるなら、何故リドリーにあとほんの15分を与えられなかった?わし、やり切れない。



さて、リドリースコット監督作品、「なんだ?この絵!」と思ったことが一度もないんです。ざっくり言えば好きなんでしょうね。逐一ショットの構図は上手だなあって。絵の重ね方も自然で無駄がないなあって。




《備忘録》
ヤク栽培のボスは「トランスポーター」の悪ボス。
タイの奥の村セット、煙の立ち登り方含め、「ブラックレイン」みたい。

〈ファーストシーン〉
頭から油を浴びせられる男。カメラ引くと縛られている。そして目の前のデンゼルワシントンが葉巻に火を付け、あっという間にジッポを投げ引火。そして6発撃ち込む。