チッコーネ

悲夢(ヒム)のチッコーネのレビュー・感想・評価

悲夢(ヒム)(2008年製作の映画)
2.5
独自の妄想を強引に作品化したギドク・ワールド。
良い方に転ぶと傑作も射程圏内に入るのだが、本作は出来の悪い部類だった。
「夢見るのが男で行動するのは女」というジェンダーロールは面白いが、是が非でも2組の男女関係で収束させようと腐心した挙句「恋人を殺した女と殺された女が、同じ部屋に収容されている」という状況が生まれているさまは、あまりにナンセンス。
いつまでも老成しない監督の欠点が、露になっている。
オダギリジョーの台詞だけ日本語、という音声にも唖然としたが、韓国公開分には声優のアフレコがあったようなので、DVD音声を選べるようにして欲しかった。
それにしてもオダギリファンの女子供が本作を観たら別の意味で唖然とするのだろうな、お気の毒様。

舞台美術はトラディショナルかつキッチュな方向に舵を切っており、ロケ背景も全部美しいのが◎。
またメインキャストふたりのにらめっこ顔を再三登場させる演出は、エキセントリックな笑いを運ぶ。
チョイ役精神科医(?)おばさんの語り口も理想的に慇懃だったりと、監督一流のシュールな感覚を確認できるのは、楽しかった。
目の大きな主演女優を際立たせるホラー映画のような照明も印象的なのだが、過酷な演出のせいか、撮影中に彼女の失神事故が起こった様子。