三樹夫

ヴァイラスの三樹夫のレビュー・感想・評価

ヴァイラス(1998年製作の映画)
2.9
宇宙ウイルスにより船の機械が殺人マシーンへと変貌し、船内で人間を殺して採らえ殺戮メカ人間に作り替えて襲ってくるという『エイリアン』エピゴーネン作品の一つ。
乗り込んだ幽霊船で正体不明の化け物に襲われていく、『ザ・グリード』や『エイリアン』を想起しないわけがない映画となっている。『ザ・グリード』というか『エイリアン2』の方が正しいか。『エイリアン』と『エイリアン2』の両方ともやろうとしており、しかもそこに『ターミネーター』を混ぜてさらに『ロボコップ』も入っているかのような作品だ。メカ人間の目が赤色と思いっきり『ターミネーター』だが、『ターミネーター』プロデューサーのゲイル・アン・ハードがこの映画でも製作に入っているというのもあるのだろう。

『エイリアン』と『エイリアン2』はそれぞれアプローチが別の映画だが、欲張りにもこの映画はその両方ともやろうとしているが、リドスコ先生の演出力や画作りには及ばず、『エイリアン2』ほどの足し算的な爆発もない。監督はキャメロンと組んでた特殊効果マンだが、監督としての腕に疑問が出る出来な上に公開したらコケたため、その後も特殊効果マンとしてやドキュメンタリーの監督はしているが、この映画で映画監督としてのキャリアは終わっている。そもそも『エイリアン』は攻撃したら酸の血を浴びるので攻撃すること自体にリスクがある、寄生されたら生きたまま幼虫の苗床にされるという素晴らしい設定があるが、この映画はそういう設定は生み出すことは出来ておらず、攻撃しても特にリスクを負うことはないし、メカ人間にされるのも大概はいったん殺されてから生産工場へ連れていかれて改造されるため緊張感は低くなる。最初の段階で『エイリアン』の劣化版になるのが決定しているが、原液を薄めたカルピスでも飲めんことないやろという低い志なのか。まさに諸々の原液を薄めたカルピスのような映画になっているが良い言い方をすれば、色々な作品がモザイク状に再生産されたポストモダン的な映画と言えるかもしれない。

10分に1回は盛り上げないとという意図からか、冒頭より嵐で船が沈むかもという殺人マシーンやメカ人間には直接関係のないスペクタクルを入れてくるが、本筋は殺人マシーンやメカ人間なわけであって本筋と関係ない見せ場作られても観てて退屈。アクションノルマを消化しているだけで盛り上がらない。錨が落ちてきて入れ墨おじさんが溺れそうの画は退屈極まるものだった。ジェイミー・リー・カーティスが囚われて今にも死にそうのシーンでも何の前触れもなくいきなり仲間が出てきてあっさり助かるし、監督の腕に疑問を持つ。
しかし元々特殊効果マンだけあってか、メカ人間のビジュアルは良い。メカ人間が全ての映画と言い切ることすらできる。『武器人間』にも通ずるような、どこかボンクラさも漂うバカが考えた人間と機械の合体デザインは楽しい。人間をグチョグチョに解剖して機械をくっつけるキモいメカ人間は観ていて飽きない。
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