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リトアニアへの旅の追憶のcyphのレビュー・感想・評価

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)
4.0
字幕なし16ミリフィルム上映ではなく中沢新一訳字幕つきを自宅で観た 本作を観てメカスの生い立ちを知ったので、メカスの映像が多幸感に溢れつつどこか説得力があるというか現実逃避や虚飾といった印象を受けないのは彼自身が「故郷を追われた難民(displaced person)」としての自分の在り方を飾らず記録しようという意思が根底にあるからなのかな、などぼんやり思った 叔父の言葉によって人生が大きく動く様はそれだけでもドラマ Go children, west. And see the world. 繰り返し思い起こされる素晴らしい台詞

メカス作品にしては珍しく、ブルックリンに集う難民たちを映したプロローグがあってからの故郷リトアニアに帰って母に寄り添い井戸から水を汲み歌い踊り…という本編が置かれる構成的なデザインで観やすかったけど後半はやっぱりうとうとしてしまった 戦争によって引き裂かれた故郷を訪ね、自身も収容されていた強制労働収容所を訪ねてもなお映像は眩しく"幸福"に満ちてる 「わたしたちの家はちゃんとそこにあって、猫がわたしたちを出迎えてくれた」「アメリカに帰ってここの人間は干し草で眠るなんて言うなよ」「まちは収容所の存在を忘れていた 草だけが覚えている」目撃者/記録者としての草への共感 『未だ失われざる楽園〜』と同様、火事を捉えた記録で幕を閉じる
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