ゴリアテの憂鬱

秋刀魚の味のゴリアテの憂鬱のレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.3
小津安二郎の遺作。

妻に先立たれた初老の主人公と婚期を迎えた娘との関わりを、「老い」と「孤独」をテーマに描いた作品。

相変わらず大きな出来事が起こるわけでもなく、戦後の日本の生活の一片を切り取っただけのストーリーですが、起伏は少なくとも観終えた後にはずっしりとした余韻が残ります。

自分くらいの歳でも戦後よりもっと後に生まれた世代ですが、〝軍艦マーチ〟が流れるシーンは、戦争を経験した日本人ならどれだけ心に染み入ったでしょうか。
その経験がなくとも、そのシーンの短い会話のやりとりの中に戦争経験者の色々な感情が入り混じっているのは十分に伝わってきました。
この作品のテーマは「戦争」ではないかと思ったくらいです。

小津作品を同じ日本人だからこそ、その繊細な感情の機微まで肌で感じることができることは、幸せにすら思えます。