TaiRa

秋刀魚の味のTaiRaのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
5.0
小津はカラーの方が好きだ。画面の中のカラーコーディネートが凄い。赤い物がかなり意識的に映り込んでたり。

「行き遅れ」なんて平気で言われてた時代の(今でもそうかな)女の子って気の毒なとこあるな。23、4で結婚しないといけないのか。男社会やダメ男(主に身内の)に人生振り回される女に小津は優しい、っていうか同情してるような感じがする。岩下志麻にある報告をした時の父と兄の呑気な反応よ。その後のゆっくり振り向く岩下志麻の凄味。嫁へやった夜の末っ子と父のやり取りも良かった。ラストの空舞台もエモい。個人的には佐田啓二と岡田茉莉子演じる息子夫婦のゴルフクラブにまつわる一連のシーンが好き。やっぱ男はダメなんだな。でもあんな風に岡田茉莉子に怒られたいよね。元生徒らに全く尊敬されてない元教師のシーンも残酷で悲しくて良い。夜中に酔い潰れた父親見てしくしく泣く杉村春子の哀愁とか。笠智衆が加東大介と軍歌バー行くシーンはやっぱ凄い。「どうして日本負けたんですかね。勝ってたら今頃あなたも私もニューヨークですよ」「けど負けて良かったじゃないか」「そうですかね、そうかもしれねえな。馬鹿な野郎が威張らなくなっただけでもね」……ここまではっきりと言い切っちゃうのも中々ないよね。
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