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アメリカン・ジゴロのmasatのレビュー・感想・評価

アメリカン・ジゴロ(1980年製作の映画)
3.5
汚れた自らの肉体と、醜いこの世界から、如何やったら救済されるのか?
信心深いポール・シュレイダーらしい、風俗に塗れながらの一筋の光明、救いの話だった。

身体の芯から結び付ける女、そんな肉体を見つけた男娼が、それが魂をも救うと気付くまで、クールで美しいLAの中、何食わぬ顔をした人間たちから滲み出す醜悪さ、その臭いを嗅ぎながら、運命の女に辿り着くまで・・・そんなショッキングな内容を、直接描写を避けながら、ネチっこく、ネットリと描こうとするポール・シュレイダーの真骨頂。血やセックスが描写されないのに、血生臭くイヤらしく、臭うのである。

そんなクールさを助長する『ミッドナイト・エクスプレス』(78)『フラッシュダンス』(86)のジョルジオ・モロダーの音楽も、映像美と共にハイセンス。

LAの柔らかい昼間の光、夕闇迫るオレンジの陽、家の空間に広がるオフホワイトなトーンから壁に掛かるアートの配置に至るまで、神経質で硬質な美意識が、カットカットの空間を完璧に貫いている。
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