ボブおじさん

白鯨のボブおじさんのレビュー・感想・評価

白鯨(1956年製作の映画)
3.7
人智の及ばぬ力を持つ巨大な白鯨〝モビー・ディック〟。その悪魔の化身に片足を奪われ復讐の炎🔥を燃やすエイハブ船長(グレゴリー・ペック)。

だが、観る者はやがて気がつく。悪魔に魂を売ったのは誰なのか?〝モビー・ディック〟とは一体何者だったのか?

1814年、マサチューセッツ州ニューベッドフォードを1隻の捕鯨船が出帆した。甲板には顔面に深い傷を持ち、鯨の骨で作った義足を不気味に響かせる男、エイハブ船長がいた。彼は〝モビー・ディック〟と呼ばれる巨大な白鯨に片足をもぎ取られて以来、復讐のみに生きてきたのだ。海から海へ長い航海の果てに、ついにその姿を現す白鯨。だがヤツは乗組員たちが次々と打ち込むモリにビクともしない。エイハブは白鯨によじ登り、その背中に復讐のモリを突き立てるが……。

導入部を除き、全編通じてほぼ海の上。そしてほぼ男しか出てこない異色の作品だ。陸の上では生きられぬ様な荒くれ男たちを洗脳し、操ってしまうエイハブ船長を「ローマの休日」のグレゴリー・ペックが荒々しく演じている。

船の上では彼こそが法であると乗組員たちに言わしめる、圧倒的なカリスマ性を持つエイハブですら〝モビー・ディック〟の前では通りすがりの雑魚でしか無かった。

果たして白鯨こそが神なのか?
エイハブは自然の摂理に歯向かう哀れな人間の末路なのか?



〈余談ですが〉
コーヒーショップ☕️の〝スターバックス(Starbucks)〟は、この映画の原作でもあるハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に出てくる捕鯨船ピークォド号のコーヒー好きの一等航海士スターバック(Starbuck)に由来しているのは有名な話。

スターバックは、本作の中でもエイハブ船長の暴走を止めようと1人奮闘する良識ある航海士役として登場している。

なお、このスターバック一等航海士には、オーウェン・チェイスというモデルがいて、彼を主人公として映画化されたのがロン・ハワード監督の「白鯨との闘い」(2015)である。

ちなみにチェイス役を演じたのはクリス・ヘムズワースで、その親友を今をときめくキリアン・マーフィが演じている。物語の語り部となる唯一生き残った若者役を演じているのは、まだ幼さの残るトム・ホランドだ。