隠れた傑作！

金持ちになるために生きたくない。
したくない仕事はしたくない。
何ものにも縛られたくない。
自由で、偽りのない生活がしたい。
何かを誰かに訴えたい。
しかし自己を見出せずにいる。
そんなモラトリアムな青春時代を、楽しみながら苦悩もしながら謳歌する、'60年代後半のアメリカの若者を描いたロードムービー。これは現代の若者にも通じるものがある。

その青春時代とは、自分にとっても主人公にとってもまさに"今"であり、"今"を大切に生きたいという信念にとても共感した。

そして、この映画における映画音楽は、ただ劇的効果を増すためだけでなく、詞が物語の展開とマッチするようにつくられており、盛り上がりや雰囲気をより一層引き立てることに成功している。
言うなれば、『野良犬』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のクライマックスのような、その場面には似つかわしく無い音楽をあえて使うことでより衝撃的なシーンにする方法とは、全く逆の手法を試みているということである。
特に、ジョニ・ミッチェルの名曲を用いた湖のシーンは圧巻。

若いときの苛立ちやプライド、不安や痛み、ひとを愛し、それ以上に自己を愛する気持ち。何者でもない焦りと何者にもなりたくない、組織に取り込まれたくない哲学。ソローの「森の生活」が懐かしい。

最後の終わり方がちょっと呆気ない気もしたけど、今日の気分にとても合っていてスッと観れた映画。

わたしは主人公の男の子みたいに放浪すらしてないけど、クズっぽいところがちょっと似てる。
この歳になってもまだ中二病。

恋愛したくなった。