柄須賀皇司

ペパーミント・キャンディーの柄須賀皇司のレビュー・感想・評価

4.5
素晴らしい映画を観ました。この映画好きだった人は同じくソルギョング主演『殺人者の記憶法』観てください。

ヨンホ(ソルギョング)は絶望の縁に立っていた。電車に飛び込み自ら死を選んだヨンホは、なぜそんな決断に至ったのか。激動の韓国社会に生きた若者の希望と絶望を描く社会派ヒューマン映画。

ヨンホの死は、まさに1960年代頃に生まれ、希望の1980年代を過ごし、停滞の時期に入った2000年代を生きた若者全員の"希望の喪失"の象徴。

映画全体を通して時系列が逆に進行します。映画冒頭の暗闇から始まってトンネルに「入る」シーンは、まさにヨンホの死後の世界から遡る最初の部分。この映画自体、絶望に暮れたヨンホの走馬灯そのものだった。部分的に各シーンを映し出す手法は、人間が死ぬ前に一生涯を、まさに「映画」のように断片的にみるといいますが、まさにそれと同じだと思う。

映画ラストのピクニックのシーン(つまりヨンホの初恋のシーン)は、人を好きになるという純粋無垢で希望に満ちたヨンホの気持ちと、民主化闘争に突入し、弾圧されていた韓国社会の夜明けに期待をしていた20代前後の人々の気持ちの象徴。それと対比して映画冒頭のピクニックのシーン(つまり20年が経過し、死に際のヨンホ)は、愛する人も初恋の人も失い絶望の縁に立つヨンホと民主化を達成し、停滞と堕落に満ちた韓国社会の象徴。

このように、希望に満ちた当時の韓国の若者が、民主化は達成したものの、その20年間の中で失ってしまった次なる未来への希望を描いた映画だと思います。ペパーミントキャンディとはまさに"希望の象徴"。当時の韓国で大ヒットを記録した裏には、このような影響が合ったと思います。

ヨンホ演じるソルギョングは本当に大好きな俳優。この映画の監督は後に『オアシス』も製作。韓国社会における若者の焦燥感をリアルに描き出す、素晴らしい社会派の監督ですねぇ。

俺の大好きなポン・ジュノ監督『母なる証明』もやねんけど、人間ってまじで追い詰められたら踊るか歌うしかなくなるんよなたぶん。BGM的な音楽の使われ方ではなく、登場人物が歌うことによって音楽が使われる映画が大好きです‼️
柄須賀皇司

柄須賀皇司