りょうた

ペパーミント・キャンディーのりょうたのレビュー・感想・評価

4.3
1999年の春から始まり、1979年の秋へと現在から過去へと時間を遡って、キム・ヨンホという男が、1999年の現在へと至った経緯が語られる。どうしてキム・ヨンホは無気力になり、線路へ登ってしまったのか。どうしてあの狂乱に至ったのか。

まだ全てを見ることはできていないのだが、イ・チャンドンは「神への不信感」が描かれているように思う。今作もそうだ。冒頭において、ヨンホは橋に登り「戻りたい」と叫ぶ。もちろん、ピクニックに来た旧友に向けたものではない。神に向かってなのだ。イ・チャンドンの作品において、神は不公平で、残酷な沈黙を守るばかりである。今作においても、神は残酷な沈黙を守る。その沈黙が語られる。

章終わりには、車窓からの逆再生が映される。巻き戻しであると同時に、前に進んでいるように見える。だが周りを見て、あぁ、過去に進んでいるのかと認識する。まさに、過去へと巻き戻すと同時に、過去へと進んでいるのだ。
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