Uえい

麦秋のUえいのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
3.5
紀子三部作もこれで見終わってしまった。今回は前作「晩春」と似ているあらすじで、紀子が結婚して家族の元を去るまでが描かれる。しかし前作よりシリアスさは薄く、子供たちのいたずらや、紀子と友達とのおふざけなどコミカルなシーンが多く楽しい。

今回も舞台は鎌倉で、波打ち際で終わった「晩春」から続くかの様に、海のシーンから始まる。
紀子の家族は、両親、兄夫婦、その子供二人で住んでいた。前半は家族のなんとない幸福なひとときが描かれている。

そして、紀子が働く会社の上司から縁談のお話が来て、家族がざわめき出す。紀子の事を心配する気持ちから、あーだこーだ言い、相手の年齢から反対してしまう。

そんな中、仲良くしていた兄の同僚が秋田に行ってしまう事になる。その同僚は、妻を亡くしていて、母と娘と暮らしていたため、三人で引越しの準備をしていた。お別れの挨拶をしに行った紀子に、母が息子と結婚してくれたらいいのになと話すと、紀子は是非と承諾したのだった。

子供がおじいちゃんにキャラメルを包み紙ごと食べさせて笑っているのが面白すぎた。子供だけじゃなく、家族は同じ屋根の下で暮らしていても、それぞれの道理でバラバラに動いている描写が多く、自分も含めて勝手なもんなんだなあとしみじみと思った。

前作と続き、今作も結婚がきっかけで家族が離れ離れになってしまう。この無常さが個人ではなく人間という生物単位での道理なのかと、大きな流れを感じた。そして、紀子の兄が戦死しているが、あまり触れられず、家族の心には残りつつもそれぞれ普通に暮らしているのが印象的だった。何か大きな出来事が起きても、生きていけてしまう、それが人間の良いところでもあり、悲しいところなんだなあと感じた。
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