爆裂BOX

恐怖のいけにえの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

恐怖のいけにえ(1980年製作の映画)
3.5
TVレポーターのジェニファーと妹カレン、アシスタントのビッキーの3人が祭りの取材のためソルバンクを訪れるが、ホテルはどこも満員。途方に暮れる中、偶然出会った中年男ケラーの好意で閑静な森の中にある彼の屋敷に招かれるが…というストーリー。
宿を借りた美女三人が恐怖に襲われるホラー映画です。原案で「悪魔のいけにえ」のキム・ヘンケルが参加しており、「新・13日の金曜日」のダニエル・スタインマンが監督を務めてますが、製作中のゴタゴタデで監督降ろされたのでピーター・フォレグ名義使っています。
ケラーの屋敷には陰気顔をした彼の妻バーバラがおり、体調を崩したビッキーを部屋に残してジェニファーとカレンは祭りの取材に向うも、一人残っていたビッキーは床の通風口から現れた何者かに惨殺されてしまうという内容です。
ホラー映画としてはゴア描写もなく、血も数滴出るくらいで派手なシーンもないんですが、何といっても本作の魅力はそのインモラルな胸糞悪くなる設定でしょうね。主人公達には常にニコニコしていてペラペラしゃべる余所行きの顔で接しながら、家族には暴力的で残忍な顔を見せる屋敷の主人ケラーと常に陰気な表情でケラーに怯えるその妻バーバラの関係がケラーと父親の「幽霊」の会話で明かされる所はギョッとさせられますし、ケラーの狂気がより一層明らかになるシーンでもありますね。二人を演じた役者さんたちの熱演も素晴らしいですね。
主演のボンドガールバーバラ・バックの終盤でずぶぬれ泥まみれになりながら逃げ回る熱演も素晴らしいですし、恐怖に怯える表情もいいですね。一番最初に犠牲になるビッキーを演じたロイス・ヤングはバーバラ・バックより可愛く感じたな。入浴シーンではボカシなしのオールヌード披露してます。
通風口から現れた何かにビッキーが部屋を引き回されて通風口に引きずり込まれて殺される恐怖演出はかなりのものですね。先に宿に帰ってきたカレンが背後の通風口に首挟まれて首の骨が折れて死んでるビッキーに気づかない演出も面白いですね。
引っ張って引っ張って終盤に登場する「ジュニア」の姿はインパクト抜群ですし、壊れて火花散ってる配電盤叩いてはキャッキャ喜んだり、怯えるヒロイン小突いて汚いぬいぐるみ押し付けようとしてそのぬいぐるみパンツにしまってニタニタしながら歩き回ったり床転げまわって水溜りすすって奇声あげたりする様は本当にそういう人が演じてるようなリアルさと怖さがありました。単純な快楽殺人鬼よりも身近に感じられる怖さがありましたね。「キャッスル・○○○〇」彷彿させる所もありますね。
でも、脅威はあくまでケラーというのも面白いですね。まあ、ジュニアは純粋で、殺人も殺そうと思ってやったんじゃなく力の加減が分らなくて不可抗力的にやった事だけど(そこが怖いけど)、ケラーの方は社会的な常識とかも教わってる(だろう)上でそれを自らかなぐり捨てて欲望のままに生きて殺人も躊躇しないんだから当然か。ヒロインそっちのけで虐げられ続けてキレた妹との兄弟喧嘩や、ジュニアとの親子喧嘩が始まる展開も面白い。ジュニアの突進喰らって吹っ飛ぶ所笑ってしまいました。
ヒロインにフラレて未練タラタラで追い掛けてきた彼氏のアメフトで負った膝の怪我が伏線として活かされる終盤のある意味見せ場も笑ってしまいました。まるで役には立たなかったけど(笑)
ダウナーで悲哀溢れるラストも強烈に印象に残りますね。
スプラッター度は低いながら役者の演技や演出も良くてまずまずの小作ではないでしょうか。