歩葉戸路素

意志の勝利の歩葉戸路素のネタバレレビュー・内容・結末

意志の勝利(1935年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

恐るべしプロパガンダ映画!!
実物のナチスを超えた映画の中のナチス像
我々の知るナチはこの映画内の戯画化されたナチだといって間違いない

現代とは真逆の倫理観や価値観や正義感が肯定されるヤバすぎる狂気世界を存分に堪能できる

何が怖いかって
それは余りにも映像のセンスが高くて狂ってるのに魅力を感じてしまう部分他ならない

例えばヒトラーと二人の将校が歩いてる場面の撮影とか
ヒトラー真正面から映せば無難にそれっぽく撮れるのに
あえてクレーン撮影で後ろ姿を捉えて、どんどん引きの構図になっていきヒトラーが向かう先の超巨大建築物と並んだ無数の兵隊たちがドバァァァァン!!
…と見える一場面なんか大スケールに気圧される破壊力!!
他にも名場面の数々

正直、現代のナチス像はこの映画の模倣に過ぎない
インディジョーンズでも同じようなシーン見たし
ナチスが出ないSF作品…例えばスターシップトゥルーパーズやガンダムでも独裁国が出る作品では高確率で模倣されている
実物のナチスではなく、この映画の戯画化されたナチス像が!

『シュミラークル現象』だと思った
ジョーズが大ヒットしてサメが人間を喰い殺す戦闘マシーンのようなイメージが実物以上に定着したように
ナチスの美化方向へのデフォルメがこの映画で出来てしまった
これ観たドイツ国民がナチスに参入したくなるのは分かる
だが現実は皆の知っての通り、独ソ戦での陰惨な敗北やホロコーストなど
映画と現実は違う
実際この映画撮影時期は『長いナイフの夜事件』で突撃隊が緊張感でピリピリしていたに違いない!
しかしそれを感じさせない撮影センスは称賛に値するし、レニ監督の今鑑賞しても全く古びてない映像美は素直に凄いとしか言いようがない

学校でプロパガンダの反面教師として鑑賞させられたが
構図やカメラワークなど、映像の魅せ方を勉強するのにも向いてる気がする
歩葉戸路素

歩葉戸路素