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キリクと魔女のchaooonのレビュー・感想・評価

キリクと魔女(1998年製作の映画)
4.2
先日続編を観たので、久々にオリジナルを再鑑賞✨

フランスのアニメの歴史を変えたミッシェル・オスロ監督の衝撃の長編デビュー作✨
今まで見たアニメの中で、衝撃という意味ではこれがNo.1‼️

魔女カラバの恐ろしい呪いにかけられていたアフリカの村。
泉の水は涸れ、魔女に立ち向かった男たちはすべて魔女に食われ、村に残っているのは、女子供と老人だけ。
そんな村に1人の赤ん坊キリクが生まれ、立ち向かっていくお話👶🏾✨

なのだけど、この赤ちゃん生まれる前から、母親に話しかけ、自力でお腹から這い出て来て、即座に走り回り、大人顔負けな賢さや行動力を発揮して来る👶🏾‼️
小さく走り回る姿はあまりに瞬足で、もうそれだけでシュール🤣

そこに更にミッシェル・オスロ監督の作り出す極彩色な映像美がまた作品のインパクトを強める✨✨
魔女の真っ赤なギラギラ感、しもべの小鬼たちの機械的な見た目とカクカクした動き。
アフリカの自然、アフリカの民族的特徴を捉えた村人たちの姿🧑🏾‍🦱👩🏾‍🦱
こういうビジュアルのアニメって他にはそんなにないし、アニメならではの世界観もあって非常に個性的!
原作・脚本・監督は、幼少時代をギニアで過ごし、そこでの強烈な体験を元に制作したとか。

そしてアフリカの民族音楽が心地よい〜♬
続編にも登場した、小さなキリクを讃える歌と踊りがやはり最高😇
「呪いの泉」のシーンは楽しいだけではなく、しんみりする感じは泣きそう🥺


初見の時は、独特な画面や物語展開、キリクの突飛な行動やそのモーションにしか目がいかず、結末もなんてシュールでロマンティック着地なんだ!さすがフランス!と思ったけど、なかなか深いテーマ性を持った物語だったことに今更ながら気付き感動🥺

村人たちが善、魔女が悪、という単純な構図ではない。
悪に手を染めてしまった魔女には苦しみや虐げられた過去があったり、村人たちも利己的で偏見にまみれていたり、愚かだったり(しかも口が悪いし、自認している)

だから物語も英雄が悪を退治する話でもないのがおもしろい。

苦痛をもたらす負の連鎖、それを断ち切るのは英雄ではなく、生まれたばかりの小さな子供。
無垢で全てがまっさら。
偏見に囚われることなく、私利私欲に心を操られることもない。
それでいて聡明。
それ故に好奇心が旺盛で、偏見で凝り固まった頭では思考を止めてしまうことにも、純粋な「なぜ?」という問いを投げかけ続ける。

キリクは小さい。
小さいからこそ皆んなが入れないところにも入り込める。
物理的にも内面的な部分にも。

人は憎しみや苦痛を与えられた時、同じく負の感情を返してしまいがち。
赦しと愛を返すべきなのだと、わかっていても実現は難しい。
囚われてしまったしがらみから抜け出すのも難しい。
それを御伽噺の中で体現したラストは、子供にも観せたいなと思う素晴らしいメッセージ。
といっても初見は、「なんて展開!奇抜ーーー」って思ってしまったけど。

痛みを取り払える正しい方法を知っていても、より今より悪化するのを恐れて、痛みを抱え続けるというのも興味深いなぁ。
さりげなく女性が男性に虐げられる示唆もあって、怖さもあった。

そして母親はいつでも子供を信じて見失わず、時に自立を促し見守ることが大切なのだと改めて学びましたね😌
自力で生まれて、自分で生湯で体を洗わせたのはびっくりだけどー🤣
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