SANKOU

タワーリング・インフェルノのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

今から50年近く前の映画だが、今観ても迫り来る炎の描写など凄まじいものがある。
地上138階建てのビルが燃える。今だったらCGを駆使してもっとダイナミックに、もっとスリリングに描くのだろうが、視覚的には楽しめてもそれが心に訴えかけるとは限らない。
確かにテンポ感はそれほど良くはないが、その分この映画には人間ドラマで魅せる部分がある。
逆に今の時代には作り出せない重厚なドラマとパニック要素が融合した傑作だと思った。
ビルの設計士であるロバーツと消防隊長のオハラハンのキャラクターがとても良い。
ポール・ニューマンにスティーヴ・マックイーンの二大スターの共演。それだけでも見応えのある作品だと思った。
パニック映画であると同時に、際限のない欲望を追求し続ける人間の愚かさを描いた作品でもあった。
ビルの設計士はロバーツだが、実際に工事の手配を行ったシモンズはロバーツが指定した素材よりも安価なものを選んでしまう。
何故なら社長のダンカンは安全性よりもコスト削減を重視してしまったからだ。
体裁ばかりを繕うダンカンは炎が上がっているのにも関わらず、屋上で行なわれている竣工のパーティーを中止しようとしない。
事態が取り返しのつかない段階になった時に、ダンカンはその責任をシモンズに押し付けようとする。
開き直ったシモンズは建前だけの責任など誰が取るものかと、自分だけが助かる道を選んでしまう。
誠実な人間ほどすべての責任を被ってしまおうとするものだが、シモンズもダンカンもその真逆の人間だ。ある意味とてもおめでたい人間だと思った。
一方ロバーツは危険を顧みずに人々を助けるために人力する。
彼のような人間が後々責任問題を追求され、責められるのだろうと思うと何だかやりきれなくなる。
ビルに閉じ込められた人々にもそれぞれドラマがあって心を動かされた。
我先にと人を押し退けてまで助かろうとする人間がいる一方、自分のことよりもパートナーの安全を気遣う人間がいる。
この映画に登場する人物は上流階級の者ばかりだが、非常時にこそ人間の本質が現れるのだと思った。
人間が炎に包まれる姿などショッキングな場面も多い。
主要な人物があっさりと命を落としてしまうシーンもある。すべてはタイミング次第であり、助かる者と助からない者の線引きはどこにあるのだろうと思った。
2時間45分の長尺だが、あまりにもスリリングな展開に最後まで引き込まれてしまい、全く長さを感じなかった。
往年のミュージカルスター、フレッド・アステアが老いた詐欺師を演じているが、彼の哀愁漂う存在感が作品の中でも際立っていた。
SANKOU

SANKOU