猫脳髄

吸血髑髏船の猫脳髄のレビュー・感想・評価

吸血髑髏船(1968年製作の映画)
3.4
これね。すごい。映画全体としては未熟さが勝ってそんなに高い評価にはならないけれど、怪奇、いやホラー映画の演出としては珠玉のシーンが取り揃っており、進取の気性に舌を巻いてしまう。

わが国では珍しい、さまよう貨物船を素材に取り上げた海洋ホラーだが、要は幽霊屋敷の置き換えである。船舶だから機械だらけで複雑な構造をしていることで、幽霊屋敷にありがちなカラクリの数かずを合理化しており、まさに死の機械として駆動させることに大成功しているのである。

さらにクライマックスに船が最期の姿を見せるのだが、これが巨大生物の断末魔のように演出しており、幽霊屋敷の崩壊、死の機械の最期が劇的である。某登場人物が巻き上げ機でひき潰されるシーンも、海外を含めてかなり早い描写事例ではなかろうか。

前半は、出港後に行方不明になった姉と通じ合う双子の妹(松岡きっこ・姉妹2役)と、海賊行為で貨物船の乗組員を惨殺した金子信雄ら悪漢らを襲う怪異を映し、後半からクライマックスでは貨物船を舞台にした恐怖描写に集約する(西村晃が登場するが、ちょっとかませ犬な役回り。しかし、幽霊船で実験を繰り返すマッド・サイエンティストという設定は見逃せない)。この前半での演出にもなかなかのものがあり、映っているのが確実に幽霊でしかないシーンが何気なく挿入されているのもニクい。

繰り返すが、全体としては高い評価にならないものの、演出の発想には十分な敬意を表したい。
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