えいがドゥロヴァウ

ディア・ドクターのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ディア・ドクター(2009年製作の映画)
3.8
過去レビュー立て続けに発掘
mixiに載っていました




ヒューマントラストシネマ渋谷にて。

『ゆれる』が好きだったので、西川美和監督最新作のチェック。

山奥の村に暮らすただ1人の医者・伊野(笑福亭鶴瓶)。その献身的な姿勢から、村の人々から絶大の信頼を寄せられ、東京から2ヶ月間の研修に来ていた研修医の相馬(瑛太)にも一目置かれていた彼だったが、ある日突然の失踪を遂げてしまう。
伊野の行方を追って2人の警察官が捜索をしていくなかで、実は伊野が医療の資格を持たない偽医者だったということが発覚する。
彼はなぜ失踪してしまったのか。
そして彼はなぜ、自分の身分を偽りながらも村の人たちのために尽力したのか。

映画を観たあとにポスターのキャッチコピーを見て、あぁなるほどな、と思った。
「その嘘は、罪ですか。」
その嘘に支えられ救われた人たちがいる以上、伊野を詐欺師呼ばわりして悪者扱いすることは出来ない、そんな善と悪の狭間のあやふやな状態。
医者になりすまし事実上は村の人たちを騙していた伊野に対し、最初こそは毛嫌いしていた警察官(松重豊)も、調査のため村人の話を聞いていくうちに、頭ごなしに伊野を否定しなくなっていく。
彼の役回りが、一番第三者的な、観客に近い視点だと感じた。

なぜ失踪したのかという疑問をはじめから提示し、それを観客に追わせるサスペンス的な要素は、『ゆれる』にも通じるものなのかもしれないなーなんて。
前作の場合は、兄が幼馴染の女性を吊り橋から本当に突き落したのかどうか、という疑問・議論がそれだった。
『ゆれる』よりだいぶ予算があったという本作だが、堅実に人の心を描いた良作だと思う。

全然今まで名前が出てきてなかったけど、八千草薫が素晴らしかった。
ラストシーンの彼女の微笑みがむっちゃイイ。