ピロシキ

赤ひげのピロシキのレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
4.7
黒澤明最後のモノクロ作品かつ最後の三船敏郎出演作品。三船を撮り尽くしてしまった、とまで言われた「赤ひげ」は、その有終の美を飾るに相応しい超大作、いや、のけぞるほどの大傑作でござった。

のちに巨匠とよばれる世界中の監督たちからも大いに参考にされたであろうガンギマリのショットが、いたるところで炸裂している。井戸の水面に写る顔たちも、大根でぶっ叩かれる大女優も、すべてが完璧である。しかし映像のパワーよりもむしろ惹きつけられるのは、ヒューマンドラマとしての側面。とくに第2部は、まぁー泣けた。

若大将に「どこまでもついて行きます」とまで言わせる赤ひげ先生、霊長類最強のオーラあり。医療従事者の方々に足を向けて寝られないのは、江戸も令和も変わらない。多くの患者の最期を看取ってきた赤ひげ先生だからこそわかる死の崇高さと、それによって浮かび上がる生の尊さ。死にゆく者たちはとことん美しく、そして生きる者たちはとことん逞しく描かれた3時間だった。
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