あんじょーら

テイク・ディス・ワルツのあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

テイク・ディス・ワルツ(2011年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

結構気になってたのは主演の2人がミシェル・ウィリアムズとセス・ローゲンだったからです。私の生涯1位怖い映画「ブルー・バレンタイン」の演技が凄まじかったので興味湧きましたし、セス・ローゲンが関わっている映画はどれも個人的な好みだからです。



結婚して5年目のフリーランスのライターであるマーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)と料理レシピ本のライターであるルー(セス・ローゲン)は仲睦まじいカップルではあるものの、何処か空疎な雰囲気に包まれた状況です。ライターとして記事取材で訪れたある島で知り合った男ダニエル(ルーク・カービー)と意気投合するのですが、偶然にも近所に住んでいることが分かり・・・というのが冒頭です。




こういった婚外間の恋愛モノは落とし所が難しいと思いますし、共感させる為の伏線なり仕掛けが重要だと思うのですが、そのひとつひとつが割合丁寧ではあったと思います、少しありきたりでベタでチープだとは思いますが、だからこそ共感できるというものだろうと思います。




何よりも、役者ミシェル・ウィリアムズの演技の素晴らしさが光る作品です。アンニュイな日常に檻としての閉塞感を感じていることが、言葉では全く説明されていないのにも関わらず、しかも演出だってくどいわけではないのに、演技で、表情で、気分の浮き沈みの激しさで、見事に表現されています。夫婦である2人がいちいち言葉に出し、確認している表層的な挨拶や言葉が、いかに空疎で上辺だけの間柄であるのか?というのを、また、その過程を見事に演じていると感じました。何かの分かり易いターニングポイントがあったわけではない、日々の日常の中で積み重なった様々な感情の澱のような物が現実味を奪ってゆく推移を上手く描けていると思います。



ストーリィとして、果たして良いのかどうかは疑問を覚えますし、正直予告編の切り口が正しいとも思えませんが、共感を呼ぶ作品であることは事実だと思います。そして共感を呼ぶのであるならば、是非見ていただきたいドラマだと思います。



ある意味映画的なクライマックスが終わった後を描く物語、そのストーリィはともかく、着地点は素晴らしいものがあると感じました。



ストーリィの終末、ある人物の吐露にこそ真実があると感じました、おっしゃるとおり。



ミシェル・ウィリアムズが気になる方にオススメ致します。






アテンション・プリーズ!



ちょっとだけ、ネタバレありの感想を。なので映画を未見の方はご遠慮下さい。



















































夫婦関係にあったとしても、恋愛感情が芽生えることはあるでしょうし、浮気は男性の専売特許ではなく、女性の側にもあると思いますし、自然なことでしょう。ただ、その感情をどう扱うかは非常にデリケートな問題だと思います。



正直この主人公であるマーゴは、誰とであっても、上手く行かない性格の持ち主でしょうし、そこを描くのがこの映画の主題ではないか?と感じました。相手の問題ではなく、自分の感情のコントロールの問題ではないか?と思うのです。常に新鮮で輝かしい生活が送られることなんてあるわけないと思うのですが。でも現実離れした生活なり世界を夢見ているという意味では、かなりの重症だと思います。もちろんベタな展開だからこそ共感できるとしても、そんな男性はかなり数少ない希少価値であろうことは容易に想像できます。天然で美人でプロポーションが良くて(以下なんでもイイ)+貴方だけが無条件に好き、という女性がいないのと一緒ですよね。



だからこそ異性目線で出来上がっている映画を見ることで客観性を得る事も出来ると思うわけです。その辺に個人的なこの映画からの教訓は無いです。ドラマチックに仕上げるためのダニエルというキャラクターであり、ある意味ご都合主義だからこそ意味がある。そしてダニエルよりもリアル寄りなルーという夫で良いと思います。ふと、道端を歩いていても泣き崩れたくなるくらい寂しい、という人物に共感させやすい演技が出来るミシェル・ウィリアムズが凄いのだと思います。



しかし、曲といい、場所といい、相手といい、簡単に心のスイッチが切り替わる人で、感情を操れてない感じが痛々しいです。誰とかタイミングとかではなく、このマーゴ自身の問題のように私は感じました。だからこそ、監督の喜ばせておいての背後から喉元にナイフを突きつけるがごとくの着地点が素晴らしい。冒頭のまどろむキッチンでの鬱屈した表情と態度が、ダニエルであっても、ルーであっても同じだった、という結末が素晴らしい。最後の最後に遊園地に1人で乗り物に乗っても、ちゃんと微笑んでいられるマーゴの一人相撲は、果たして自覚出来たからなのでしょうか?私はただ気分転換に来ただけ、のように受け止めました。




またプールでのどうしようもないまでの同性目線で作られた赤裸々なシーンは男の私としては圧巻でした。視覚情報だけで、年齢だけで、ここまでの違いがあるのか、と。裸であることが=セクシーであることでないのは知ってましたけど、ここまでの衝撃とは。




あと、いくら親しいからって、歯磨きしてる夫がいるユニットバスルームで同時にトイレで用を足すのはすごく、すごく、すごく、びっくりしました。そんな人がこんなアンニュイでナイーブな人なのか?という疑問と共に。